この記事の要約
本記事では、JAS有機栽培が日本で広がりにくい理由 を、制度・気候・農業構造の観点から整理します。
有機農業の理念は自然栽培と重なる部分が大きい一方で、JAS有機は「投入」を前提とした仕組みであり、日本の温暖多湿な気候では病害虫管理の負担が大きくなりやすいという課題があります。
併せて、
- JAS有機で認められる肥料・農薬の仕組み
- 「窒素過多」や気候条件が作物に与える影響
- 自然栽培が目指す“生態系の働きを活かす”という考え方
- 自然栽培が「いきなりゼロ投入」で成立するわけではない理由
についても取り上げ、投入型農業の限界と、その先の可能性 を俯瞰的にまとめています。
このレポートは、
自然栽培セミナー全15回を「もちまる視点」で追いかける連載企画の第6回です。
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→ もちまる自然栽培セミナー・全話まとめガイドはこちら
https://sanseitohow.com/natural-farming-series-2/
はじめに
本記事は、自然栽培セミナー第6回の内容を、
もちまる視点で「日本の有機農業の現在地」と「自然栽培の立ち位置」を整理したレポートです。
今回のテーマは、
- なぜJAS有機栽培は日本でなかなか広がらないのか?
- “投入型”の農業は、どこに課題を抱えているのか?
- 自然栽培はその中でどんな位置づけにあるのか?
といった問いでした。
制度や法律、理念、気候条件などにも触れるため、
やや慎重な扱いが必要な内容も含まれますが、
本記事では特定の立場を批判することを目的とせず、
- セミナーで提示されたデータや制度の仕組み
- 世界と日本の有機農業の比較
- それらを踏まえて描ける「全体の見取り図」
を中心に、できるだけニュートラルな視点でまとめています。
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農業の「効率」と「環境保全」という二つの軸
セミナーの最初に示されたのは、
現代の農業がつねに 「効率」と「環境保全」 という二つの軸の間で揺れ動いている、という視点でした。
一方には、
- 収量の安定
- 作業の効率化
- 大規模生産への適応
といった要請を満たすために発展してきた 慣行栽培(化学肥料+合成農薬を前提とする体系) があり、
もう一方には、
- 環境への負荷を減らすこと
- 自然の循環をいかすこと
- 長期的な持続性
を重視する 有機栽培や自然栽培 といった方向性があります。
ここで特徴的なのは、同じ「環境に配慮した農業」とされる JAS有機栽培 と 自然栽培 が、
理念としては近い面を持ちながら、
実際の栽培方法としては対照的である点です。
- 自然栽培
- 無肥料・無農薬
- 土壌微生物や生態系のはたらきを中心に据える
- JAS有機栽培
- 化学肥料・合成農薬は使わない
- そのうえで、有機肥料や認証農薬など「投入する資材」を前提とする
どちらが優れているという話ではなく、
「環境に配慮する」という同じ方向を向きながらも、
そのアプローチが大きく異なる ということ。
この違いが、
「日本で有機農業がなかなか広がらないのはなぜか?」
という問いを考えるときの前提にもなってきます。
次章では、
こうした二つの軸が国の政策にどのように反映されているのか、
そして 日本の有機農業が直面している現状 について整理していきます。
「緑の食料システム戦略」と、日本の有機農業の現在地
現在、日本の農業政策の中では、
環境への配慮を強めていくための方向性として
- 農林水産業のCO₂ゼロエミッション化
- 化学肥料の30%低減
- 農薬の50%削減
- 有機農業の取り組み面積を25%(約100万ha)へ拡大
といった目標が掲げられています。
これが「緑の食料システム戦略」と呼ばれるものです。
セミナーでも触れられていましたが、
こうした目標そのものは環境負荷の軽減という点で明確な方向性を示している一方、
現時点で日本の有機農業の面積は、まだ 1%に届かない水準 にあります。
つまり、
「環境に配慮した農業を広げていこう」という大きな方向性はある
しかし、それを現場でどのように実現するかは、まだ模索の途中
というのが、現在地といえそうです。
このギャップが生まれる背景には、
日本特有の気候条件、農地構造、農業経営の事情など、
さまざまな要因が複雑に関わっています。
次章では、その一端を客観的に捉えるために、
世界と日本の有機農業を「面積」という指標から見比べてみる
という視点へ進んでいきます。
世界と日本の有機農業を、面積から眺めてみる
セミナーでは、有機農業が世界でどれくらい広がっているのかを示す指標として、
各国の「有機農業の面積割合」を比較したデータが紹介されました(2017年時点)。
例として挙げられていた数字は、おおよそ次のようなものです。
- リヒテンシュタイン:30%超
- オーストリア:20%超
- スウェーデン:15%前後
- イタリア・ドイツ:1ケタ後半〜10%台
- オーストラリア:数%台
- アメリカ:0.5%
- 中国:0.3%
- 日本:0.2%前後
こうして並べてみると、
ヨーロッパの一部では、有機農業がすでに一つの柱として定着しつつある
一方で、日本・アメリカ・中国などでは、まだ広がり始めの段階にある
という大まかな傾向が見えてきます。
ただし、ここで重要なのは「数値の比較で優劣をつけること」ではありません。
セミナーでも強調されていたように、
- 国ごとの気候条件
- どんな農産物が作られてきたかという歴史
- 小規模・大規模といった農業構造の違い
といった要素の積み重ねによって、
有機農業の広がりやすさ・課題の種類も大きく変わってきます。
そのため、単純に「割合が高い/低い」で評価するのではなく、
それぞれの国が置かれた前提の違いを理解したうえで見ていくことが大切
という視点が示されていました。
この流れを受けて、次の章では、
「そもそも有機農業とは、どんな理念を土台にしているのか?」
「日本では、それがどのように法律・制度として整理されているのか?」
というテーマへと進んでいきます。
有機農業の理念と、日本の法律に書かれていること
セミナーではまず、
「そもそも有機農業とは何を大切にする農業なのか?」
という、理念的な土台から確認されました。
国際有機農業運動連盟(IFOAM)が示す定義では、有機農業は一言でまとめると、
- 土壌・生態系・人の健康を尊重する農業システムであること
- 地域ごとの自然な循環に根ざし、過度に外部投入に頼らないこと
- 伝統・革新・科学を結びつけ、より良い暮らしと公正な関係をめざすこと
といった理念を持つとされています。
日本でも、
- 「有機農業の推進に関する法律」(2006年)
- その中に記された 「有機農業産物の生産の原則」
などで、同じ方向性が明確に示されています。
そこでは、
- 化学肥料・化学合成農薬の使用を避けること
- 土壌の性質を生かし、本来の生産力を引き出すこと
- 自然循環を重視し、環境負荷をできるだけ小さくすること
といった基本姿勢が掲げられています。
この理念レベルの話だけを取り出してみると、
自然栽培
自然農法
JAS有機栽培
といった農法は、少なくとも「大切にしている方向」はかなり近いものに見えます。
ただし、次に登場するのが、
「では、理念を実際の現場でどう確認し、どう認証するのか?」
という、もう少し制度的な話です。
ここから次章では、
JAS有機がどのような仕組みで認証されているのかを見ていきます。
JAS有機はどのように認証されるのか
セミナーでは、日本の「有機」を支えている制度として、
有機JAS認証の仕組みが紹介されました。
日本では、
- 国が定めた「有機食品のJAS規格」に沿って栽培されているか
- 栽培管理の実態が基準を満たしているか
を、登録認証機関が現場で確認するという流れになっています。
そして、基準を満たした事業者だけが
「有機JASマーク」
を表示することができます。
逆に言えば、
このマークが付いていない農産物や加工品に
「有機」「オーガニック」といった名称を使うことは、
法律上できない仕組みになっている。
という、「表示のルール」もここで重要なポイントになります。
ここまでは比較的シンプルで、
“有機と名乗るなら、透明性のある基準のもとで作られていることを示す”
という制度的な枠組みだと言えます。
しかし次のステップとして、
「では、JAS有機では具体的にどんな肥料・資材が使えるのか?」
「その運用にはどんな難しさがあるのか?」
という実務レベルの話に入ると、現場ならではの課題も見えてきます。
次章では、
JAS有機で使用が認められている肥料・資材の一覧と、そこに潜む課題
について整理していきます。
JAS有機で認められている肥料・資材と、その課題
有機JASでは、本来の基本方針として、
- 生産の過程で出た作物残さを活用する
- 圃場内での循環を重視し、外部投入を最小限にする
といった方向性が示されています。
ただし、それだけでは生産力を維持できない場合は例外として、
- 一定条件を満たした堆肥
- 植物由来・動物由来・鉱物由来の資材(「別表1」に掲載されたもの)
に限り、使用が認められています。
セミナーでは、この中でもとくに 畜産系堆肥 に関連するポイントが紹介されました。
例えば、
- 市販の堆肥として広く流通しており、入手しやすい
- ただし、「熟度」や「窒素成分量」は製品によって幅がある
- 使用量の上限は制度上明確に定められているわけではない
といった実態があり、これが現場での扱い方に差を生みやすいとのことでした。
そのため、状況によっては、
- 堆肥が未熟なまま投入されることで土が“窒素リッチ”になりやすい
- 堆肥の量が多くなると、環境負荷(窒素の流出や温室効果ガス)につながる可能性がある
といった課題が指摘されることもある──という説明です。
さらにセミナーでは、
家畜が食べている飼料の多くは海外で作られており、
その生産段階では化学肥料などが使われているケースもある。
という背景にも触れられました。
そのため、
- 「家畜由来の堆肥」というかたちで畑に戻る栄養には、
広い意味で“外部投入”の影響が含まれていることもある
という視点が示され、
制度の理念と、実際の栄養循環の構造とのあいだに
少し複雑なズレが生じやすいことも理解できました。
しかし、もう一つ重要なポイントとして紹介されたのが、
“窒素の多さ”そのものが作物の性質に大きく影響し、
病害虫との関係にもつながっていく。
という点です。
ここから話題は、
「窒素過多が作物にどんな影響を与えるのか」
「なぜ病気や害虫との関係が強くなる場合があるのか」
という次の章へ進んでいきました。
「窒素過多」が招くもの──作物と病害虫の関係
堆肥や肥料に含まれる「窒素」は、作物が生長するうえで欠かせない栄養素です。
ところがセミナーでは、
- 窒素が多すぎると作物が軟弱になりやすい
- 病気や害虫に狙われるリスクが高まることがある
という、量の過不足にまつわる注意点も紹介されました。
言い換えれば、
「収量を増やしたいから」と肥料を増やしすぎるほど、
かえって作物がストレスに弱くなる場合がある。
という矛盾が起こり得る、ということです。
ここで強調されていたのは、
問題が 「有機か・化学か」 という区分そのものにあるわけではなく、
- どれくらいの量を
- どんな資材で
- どのタイミングで施すのか
という、栽培設計そのもののバランス にあるという視点でした。
この理解があると、
なぜ一部の有機栽培が病害虫に悩まされやすくなるのか?
なぜ自然栽培では比較的トラブルが抑えられる事例があるのか?
といった話も整理しやすくなります。
そしてもう一つ重要なのが、
病害虫への強さ・弱さは「肥料の量」だけで決まるわけではない。
という点でした。
栽培方法によって、
天敵・微生物・植生など 畑の環境そのもの が変われば、
病害虫との関係も大きく変わってきます。
ここから話題は自然と、
「では、病害虫への対策として JAS有機ではどのような農薬が使えるのか?」
「その位置づけは慣行栽培とどう違うのか?」
という次のテーマへと移っていきました。
JAS有機で使える農薬と、その位置づけ
農薬についても、有機JASには明確な方針があります。
基本的には、
- 耕種的防除(品種・輪作・作付け時期の工夫)
- 物理的防除(防虫ネット・袋がけ・手作業による除去など)
- 生物的防除(天敵・微生物の力を生かす方法)
といった、薬剤に依存しない方法 で対応することが前提です。
それでも、
「このままでは作物に重大な損害が出る」
という例外的な状況
に限り、別表2 に定められた資材の使用が認められています。
例として挙げられていたのは、
- 除虫菊由来成分(ピレトリン等)
- ボルドー液(硫酸銅+石灰)
- 硫黄剤
- 植物油・デンプンなど“気門封鎖”型の資材
- 一部の微生物由来資材
- 性フェロモン剤(交尾攪乱)
などで、範囲は比較的限定的です。
セミナーでは、これらの資材の「良し悪し」を決めつけるのではなく、
- 天然由来でも、銅や硫黄のように環境への慎重な配慮が必要なものがある
- 害虫だけでなく天敵にも影響し得る、非選択的な資材も含まれる
- 合成農薬に比べ穏やかな作用のものが多く、効果を出すには労力が増える場合がある
といった 特徴 が共有されていました。
ここで改めて強調されていたのは、
「有機=安全」「合成=危険」
といった単純な二項対立では語れない、ということ。
重要なのは、
- どの資材を
- どの場面で
- どの方法と組み合わせるのか
という、畑全体の設計の問題 であるという視点でした。
そして、この「設計の難しさ」は国・地域の環境条件によっても大きく変わってきます。
ここから話は自然に、
「なぜ日本では、有機栽培が他国ほど広がりにくいのか?」
「日本特有の気候が、防除方法や栽培設計にどう影響しているのか?」
という次のテーマへと進んでいきました。
日本で有機栽培が増えにくい気候的な背景
では、なぜ日本では有機栽培が海外ほど広がっていないのか――。
セミナーでは、その背景のひとつとして 「気候」 が取り上げられていました。
日本の農業環境には、
- 温暖多湿で雨が多い
- カビや病原菌が発生しやすい
- 虫の活動が盛んで、害虫圧が高くなりやすい
といった特徴があります。
こうした条件のもとでは、
- 収量を確保したくて堆肥を増やす
- → 作物が軟弱になりやすく、病害虫が寄りやすくなる
- → 有機JASで使える農薬は作用が穏やかなものが多く、対策に時間や手間がかかりやすい
というサイクルが生まれ、結果として生産者の負担が増えやすいという説明でした。
セミナーでは、参考として
「化学肥料を使いながら農薬だけを止めた場合、収量がどう変化するか」
を調べた古い比較データも紹介されました。
- 多くの作物で収量が 3割前後減少
- 一部の果樹では 収穫が難しくなるケース もあった
という結果で、
ただしこれはあくまで
「無肥料で行う自然栽培」とは前提条件がまったく異なる
という注釈が添えられていました。
重要なのは、
- 「有機」だから難しい
- 「慣行」だから簡単
という話ではなく、
“日本の気候条件の中で、どの方式なら安定した栽培ができるのか”
という問いが、非常に複雑な領域であるという点でした。
そして、ここで話題は自然に次のテーマへ移っていきます。
投入量を調整するだけでなく、「生態系の働きそのものを活かす」という発想があるのでは?
次章では、
自然栽培がどんな方向を目指しているのか、
そして「投入」という考え方とは少し違う世界観がどう描かれているのか
が語られていきました。
自然栽培が目指すもの──「投入」から「生態系の働き」へ
ここまで見てきたように、現代の農業にはさまざまな方法がありますが、
その根底には「どこに重心を置くか」という違いがあります。
- 慣行栽培・有機栽培
→ 基本的には、外部から肥料や農薬・資材を投入して生産力を支える - 自然栽培
→ 土壌微生物の働きや天敵など、もともとその土地にある“生物の仕組み”を活かすことで生産を成立させようとする
この対比が、セミナー全体を通して重要なポイントとして語られていました。
セミナーでは参考例として、
- 無肥料・無農薬でも、長年にわたり安定した収量を得ている水田のケース
- 無肥料条件で、特定の病気(例:イモチ病)が出にくくなるとされる例
- 草生管理の畑で、クモ・寄生バチなど天敵が豊富で、アブラムシがほとんど見られない例
などが紹介され、
「投入量を減らす」こと自体よりも、
「生態系の働きをどう引き出すか」が鍵になる
という視点が示されました。
ここでのポイントは、
- 自然栽培が“特別な技術”というより、
畑の中で起きている自然の営みをどう整えるかという発想 に立っていること - 「肥料を入れない=何もしない」ではなく、
環境を整えるという、別のタイプの“手入れ”が必要になる ということ
です。
こうした話を踏まえると、次に生まれてくる疑問は自然なものです。
「では、自然栽培は最初から“完全ゼロ投入”で始められるのか?」
ここから次章では、
自然栽培が実際にはどのような段階を踏んで成り立つのか、
そして なぜ“準備期間”が必要とされるのか
というテーマが語られていきました。
自然栽培は「いきなりゼロ投入」ではない
セミナーの中で繰り返し強調されていたのは、
「自然栽培=今日から急に無肥料・無農薬で始められるものではない」
という、とても大切な前提でした。
自然栽培が成立するためには、
- 土地がもともと持つ“地力”が一定以上あること
- 土壌の状態が、安定した生態系を育める段階にあること
といった条件が必要になります。
講義の説明では、
- 自然栽培そのものは、短期間で地力を高める力を持つわけではない
- とくに条件の厳しい土地で、いきなり無肥料・無農薬に移行してもうまくいかないことが多い
- だからこそ、「土づくりの期間」をしっかり設けることが重要
と整理されていました。
そのうえで示されたのが、
自然栽培へ向かうには “段階を踏む” という考え方が大切
という視点です。
たとえばセミナーでは、
- 最初の段階では、有機栽培的なアプローチや「炭素の多い資材」を用いて土を整える
- pH や微生物環境が落ちつき、地力が育ってきたら
- 少しずつ自然栽培へ移行する
という、階段を上るようなプロセスが紹介されていました。
なお、講義の中で語られたのは「炭素の多い資材」という概念までで、
具体的な素材・方法については細かい言及はありませんでした。
一方で、セミナーを聞きながら私自身の中には、
家庭菜園レベルでも応用できそうな次のような「イメージ」がふくらみました。
※ここからは、セミナー内容ではなく もちまる個人の想像・解釈 です。
- 落ち葉や刈草など、身近にある有機物を土に戻していく
- 乾燥させた生ごみを細かくし、少量ずつ土に混ぜていく
- 米ぬかなどを微生物の“栄養源”として活用する
こうした方法なら、小さな庭やプランターでも始められそうだ――
そんなイメージが自然と湧いてきました。
まとめると、次のように整理できます。
- ここまでの「段階的に自然栽培へ向かう」という考え方はセミナーで語られていた内容
- 具体的な家庭菜園レベルの工夫は、もちまる個人のイメージ・感想
この二つを切り分けることで、
自然栽培がどのような“プロセスの上に成り立つ農法なのか”が、よりくっきり見えてきた気がします。
そしてこの理解は、その先に続く
「自然栽培をどう捉えるのか」「農との向き合い方をどう考えるのか」
という、個人的な考察へ自然につながっていきました。
次章では、セミナーを通して感じたことを、
もちまるとして率直にまとめていきます。
もちまるの感じたこと(個人的感想として)
第6回のセミナーを通して私の中に浮かんできたのは、
- 有機栽培と自然栽培は、理念のレベルでは驚くほど共通点が多いこと
- しかし、制度としてのJAS有機栽培は「投入」を前提にデザインされており、日本の気候条件では病害虫管理の負担が大きくなりやすいこと
- 自然栽培は、外部資材を減らすというよりも「土壌と生態系の働きを引き出すこと」を軸に置いていること
- そして自然栽培もまた、“始めればすぐ実る” 方法ではなく、地力づくりという準備段階をしっかり含むプロセスであること
といった 「投入型農業の限界」と、その先にある方向性 でした。
日本でJAS有機栽培が大きく広がらない背景には、
- 湿度が高く病害虫が発生しやすいという気候
- 認証制度の構造的なハードル
- 生産者の負担の大きさ
- 「有機」のイメージと、実際の栽培現場とのギャップ
など、複数の要因が重なっているのだろうと感じます。
その一方で、自然栽培や自然農法は、
「投入」ではなく、「生態系の働きをどう整えるか」
という、別のアプローチを示しているように思えました。
今回のセミナーで、個人的にもっとも大きな発見だったのは、
自然栽培でも、最初の土づくりの段階では適切な資材投入が必要になること
そして地力が整うまでに、数年単位の準備期間がかかるという現実的な時間軸があること
この2点が、非常にクリアになったことです。
自然栽培といえば「無肥料・無農薬で完結する」というイメージが先に立ちますが、
荒れた土地で最初からゼロ投入で始めればよいわけではない、という点が腑に落ちました。
むしろ、
- 土をどう育てるか
- どんな段階で自然栽培に移行するのか
- 生態系が働ける状態をどう整えるか
といった “土台づくりのプロセス” が、非常に重要なのだと感じます。
今はまだ輪郭が見えてきた段階ですが、
それでも自然栽培というものが、
単なる「無施肥の栽培法」ではなく、
土と向き合う長いプロセスの中にある技術体系
であることが、少しずつ理解できてきました。
次の講義で、その輪郭がどう深まっていくのか――
そんな静かな期待を抱きながら、この回を締めたいと思います。
▶ 次回につづく
第7回
「肥料を入れないのに、なぜ育つ?自然栽培の仕組みを学んだ日」第6回では、
- なぜ日本でJAS有機栽培が広がりにくいのか
- 日本の気候と、有機栽培が抱える現実的な課題
- 「投入型農業」という構造がもつ限界
- その対比として浮かび上がる、自然栽培という考え方
など、
制度・気候・現場の負担という視点から、
有機栽培と自然栽培の違いを整理しました。次回はいよいよ、
- 肥料を入れないのに、なぜ作物は育つのか?
- 自然栽培は「感覚的な農法」なのか、それとも「技術」なのか?
- 土壌微生物と窒素循環は、どのように収量を支えているのか?
といった、
**自然栽培の“仕組みそのもの”**に踏み込んでいきます。「外部から与える農業」から、
「生態系の働きを引き出す農業」へ。自然栽培が理論としてどこまで説明できるのかを、
データと考え方の両面から整理する回です。▶ 第7回のレポートを読む
https://sanseitohow.com/natural-farming-mechanism/


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